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公的断食施設 五色県民健康村健康道場

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ほんとうの時代(PHP研究所)


「現代に蔓延するストレス病」の処方箋

「絶食療法」で心身を癒す!

兵庫県・淡路島の西海岸中央部に位置する五色町。ここに国内唯一の公的な絶食療法施設、五色県民健康村健康道場が開設されたのが、16年前。

以来笹田信五道場長が提唱する「生かされてる医学」のもと、数多くの来所者が指導を受け、心身の健康を回復している。21世紀の新しい健康医学を見据えた画期的療法を体験取材した。

一日に特製ジュース三杯と水二リットルだけ

風光明媚な島の景色を眺めながら車で五色町へと向かい、午前十一時、小高い丘の上にある健康道場にようやくたどり着いた。受付で丁寧な応対を受け、荷物を部屋におくと、早速検査室へ。

 採尿、心電図、血圧と身長体重の測定、胸部X線‐そして、あらかじめ提出してあった問診表、アンケートを前に、道場長・笹田信五先生の診察に入る。ここで「絶食療法」を行っても大丈夫かどうかの最終判断がなされる。

 絶食期間に入ると、一日に摂取するカロリーは三00キロカロリー。特製ジュースを午前七時半、十一時半、午後五時の三回、コップに一杯ずつ飲み、そのほか脱水症状を防ぐため、水かお茶を約二リットル。

身体への負担が大きく時には危険が伴う療法であるため、診断は慎重に行われる。人によっては牛乳やヨーグルト、夜食をメニューに加えたり、おかゆ食をとらせることもある。

 診察を終え、「絶食の許可」が下りると、さっそく昼食の特製ジュースをいただいた。バナナヨーグルトのような味がして、飲みやすい。味わうように、ゆっ くりゆっくり喉を通す。窓の外に見はるかす瀬戸内海。これからいよいよ絶食‐朝食もきちんととってくればよかったと、早くも今朝のメニューを思い返してい る。ところで「絶食」と「断食」とはどう違うのか。笹田先生に聞いてみた。


 「私が提唱するファースティング(絶食療法)は、徹底した医学管理のもとに行うものです。また、目的も違います。断食とはもともと宗教の修行方法として 出発したものです。それが日本では次第に難病を治すといった断食道場として定着してきていますが、ファースティングの場合、第一の目的は、健康者の健康増 進です。ですから心室性不整脈やガン、肝硬変など、治療を必要とする病気の方には、入所前の電話問診でその旨をご説明するようにしています。そういう人が 絶食療法を行うことは、いわば賭け、危険が伴うわけですから」

 それでは、健康な人しか入所できないのか。

「ところが、現代のほとんどの病気は『ストレス病』です。心身医学の立場から考えると、糖尿病、高血圧症、アトピー性皮膚炎、過食症、無気力症等々、すべ て元をたどればストレスという病から発しているのです。そうした心身相関を正しく理解し、緊急事態至る前に、ストレスを解消するのではなく解決する。それ がファースティングの目指すところです」

そこで、入所者の心身の状態を把握するためのひとつの目安としているのが、右の「爽やか指数」「不快指数」のチェック表である。「道場に来た時点で無感動 さんだったり不快さんだったりした人も、退所するころには爽やかさんになっている‐最初の二年くらいは、それで満足していました。ところが、多くの人が半 年もすると元に戻っている。結局家庭とか職場とか、問題は何ひとつ解決していないわけだから、元の環境に帰ってしまえば心身も元の状態に戻るのは当たり前 だと気付いたんです」

旅にでるのがいい、温泉もいいといっても、それはストレス解消でしかない。しかも、家庭や職場から離れることが条件になってしまう。

「家庭や職場のなかで、本当に健康に幸せに生きるためには、ストレスから逃げるのではなく、解決する必要があると考えるようになり、そうして生み出されたのが『生かされてる医学』の考え方だったわけです」

ストレス解決の鍵は「自分の山を登る」生き方

話を聞きながら、まだ一食しか抜いていないのに、おなかが鳴りだす。絶食中に空腹感を訴えてくる人はいないのだろうか。

「アンケートをとった結果、空腹感をまったく感じなかったひとが10.8%、ほとんど感じなかった人が36.4%、少し感じた人が31.8%で、イメージ するほど空腹感に襲われることはありません。体内に蓄積されているエネルギーで、充分まかなっていけるんです。ただ身体が慣れる二日目までは、多少空腹感 を覚えるかもしれません。また、頭で描く食べ物の幻想は膨らみます。その代わり他の悩みが消え、頭が次第に空っぽになっていく……そこが実は狙いの,ひと つでもあるんです」

確かに、お昼の食堂で周りの人たちの話をきいていると、食べ物のことに集中していたのを思い出す。ここを出たらパン屋さんめぐりをするんだ、あれが食べたい、これが食べたい、等々。笹田先生の話はつづく。

「ストレスを解決するには、たいていのは、職場を変えたらいいとか、つきあう相手を変えたらいいとかいう結論を出したがる。でもそれではうまくいかないんです」−そこで考え至ったのは、自分に充実感、生きている喜びや感動があれば、ストレスにならない、ということです」

実際、ファースティングをすると、みんな充実感や感動をもてるようになるという。

「もともと人間にはそういう力が備わっているということなんです。

それをなぜ日常に帰ると失ってしまうのか。『他人の山を登る生き方をしている』からです。
それは貧しい時代には意味があったかもしれない。でも今日のような豊かな社会では、社会の価値観、企業の価値観、世間の価値観で生きていては感動は得られないのです」

では、どうやったら日常に帰っても充実感を保ちつづけられるか、笹田先生はその具体的な処方箋を考えた。

そのひとつが、家庭でできるミ二・ファースティング。遇に一日、一食か二食を、牛乳一本と薄いお茶か水〇・七リットルに替える方法である。ここで大切なのは「意識的に行なう」こと。これが抜けると、忙しくて一、二食抜いたのと同じことになり、効果はない。

また、その日だけは道場でのファースティング同様、タバコ・お酒・運動・運転・入浴(シャワー可)は控える。これを毎週一日行なうだけでも効果があるという。

先生のお話をうかがったあと、看護婦さんから滞在中の注意事項、館内のオリエンテーションを受けるが、このころから睡魔に襲われる。血糖値が下がり始めるのと、安心感とで、多くの人は道場に来るとよく眠るという。

夕食のあとは思い思いの夜を過ごすが、二度ほど看護婦の巡回がある。夜十時消灯。

「生かされてる医学」の本質は自己肯定すること

翌朝は、目覚めがよかった。再び採尿、体重測定、そして採血。

朝食前に散歩に出ると、鳥のさえずりが聞こえ、二月の突き刺すような冷気も肌に心地いい。不思議と空腹感は気にならない。夢にカレーライスが出てきたが、いまはそれを食べたいとも思わない。

九時からは絶食中唯一の運動、保健体操が始まり、つづいて丹田(たんでん)呼吸法の練習。この「丹田呼吸法」も、笹田先生が「充実感を高めるための」具体的処方箋として推奨しているものである。

「丹田呼吸法」とは、座禅で行なう腹式呼吸のようなもの。とくに「丹田」といわれる腹筋のあたりに意識を集中し、大きな呼吸をつづけることにより、自律神 経系をリラックスさせたり、逆に疲れて機能低下しているときには適度の緊張感を与え、調和を回復する働きがあるのだという。             

丹田呼吸法の練習のあとは、血圧測定、問診、診察。これは日・祝日以外の毎日行なわれる。とにかく体調チェックのフォローがきめこまかである。十時と午後二時には各自が体温と脈拍の記録をとる。

午後からは、笹田先生の講義。テーマは「性格分析」‐「生かされてる医学」を理解するうえでの重要なファクターである。「ストレスの原因のひとつは性格です。自分の性格のタイプを知り、問題がどこにあるのかを認識すること、これが第一歩です。

そして、性格とはイコール自分ではないということ、つまり性格とは自分が身につけている衣装であって、性格がだめだから自分がだめだとは決して思わないことが大切です」

「生かされてる医学」の基本的な考えに、この「自己肯定」がある。

つまり、私たちの心臓は毎日十万回動いているが、決して私たち自身が動かしているわけではない、太陽も酸素も水も、人間がつくっているわけではない、「生 かされてる」のは医学的事実である……だからこそ自分がすばらしい、いとおしいのだと、惨めな自分も情けない自分も超えたところで自己肯定する考え方であ る。医学博士らしい、説得力のある話である。

 講義のあとは丹田呼吸法の応用編、そして、短期滞在の私は、早くもその夜からおかゆの復食メニューに入った。食べ物が喉を下っていく感じ-ごはんが食べられる幸せをかみしめる。

「自分を見つめることで心も体も癒される」

 笹田先生によると、いやなこと、困難なことが起きたときに、「不安」を感じる人と「不満」を感じる人の両タイプがいる。自分がどちらのタイプかを見きわめたうえで、その解決策を考えていくことが大切だという。

「不安」な人には安心を、「不満」な人には満足を得られるような方法を講じていく。そして、最終的には性格から自由になり、自分らしく生きる方法を学ぶ。

 最近の入所者の傾向としては、リストラで悩む中高年男性、子供とどう接したらいいかわからない親、アレルギーや過食気味の女性が増えているという。
世相を如実に反映している。今後ますますこうした「心身医学」が重要な役割をもつのではないかと痛感する。

 道場で出会った五十二歳の男性は次のように話してくれた。

「息子が極度の肥満で、高校受験を前に家でごろごろするばかり。
子供の将来が心配で心配で、わらにもすがる思いで、笹田先生に相談しました。そのとき、まずは親の不安を取り除くことが必要だといわれ、自分自身が神経症 気味であること、そしてそれが息子にも影響を及ぼしていたことに気づきました。ここに来て、ほんとうによかったと思っています」

 たった三日間の体験入所。劇的な体重変化は見られなかったが、退所の日、自分の心のなかが微妙に変わっていることに気がついた。

心身の贅肉が落ち、迷いや不安がふっきれている。そして、自然が美しいという当たり前の事実に、心から共感できた。
 



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